米国移民政策大転換 EB-5とトランプ・ゴールドカードの比較

株式会社アエルワールド代表取締役・株式会社ネクストナビ相談員
(海外投資家ビザ・海外移住担当)
大森健史
トランプ米大統領肝いりの新移民プログラム
2025年9月19日にドナルド・トランプ大統領が署名した大統領令14351号「The Gold Card」ビザプログラムは米国の移民制度における歴史的な転換点となりました。
2026年2月現在、本プログラムは従来の投資永住権(EB-5)投資家ビザプログラムとは根本的に異なる、富裕層向けの「寄付(Gift)」に基づく迅速な永住権取得ルートとして設計されています。特に、雇用創出の要件を撤廃し、審査プロセスの簡素化が最大の魅力です。一方で、権限逸脱による連邦訴訟が発生することに見られる法的脆弱性や、税制面での未確定要素、経済的詳細等の厳格なプライバシー開示要求など、申請者が考慮すべき重大な懸念事項も存在しています。
既存の投資永住権(EB-5)プログラムとは?
EB-5ビザは、1990年にアメリカで導入された移民投資プログラムで、外国人投資家がアメリカ経済に資本を投資し、新たな雇用を生み出すことを目的としています。
EB-5ビザを取得すると、投資家とその家族はアメリカで永住権を得ることができ、投資した資金は一定期間後に返還されることが一般的です。
〈EB-5ビザの申請条件〉
・新しい商業プロジェクトに最低80万ドルを投資する必要がある
・そのプロジェクトで、2年以内に少なくとも10人のフルタイム雇用を生み出す必要がある
・資金が合法的に得られたものであることを証明する必要がある
一人でこれらの要件を満たすのは難しいため、多くの投資家はリージョナルセンターという事業者を通じて各種プロジェクトに投資する選択をしています。
〈具体的なプロジェクトの例〉
今回ご紹介するのは、米国オレゴン州ユージーンのオレゴン大学に隣接して建設される、14階建ての学生向け住宅開発案件です。このプロジェクトに投資することによりEB-5が申請可能です。
・開発パートナー
Fields Holdings(フィールズ・ホールディングス)。米国カリフォルニア州を拠点とする不動産開発会社で、大学周辺の高級学生寮(スチューデント・ハウジング)の開発に特化した実績を持っている。
・規模
306ユニット(685ベッド)の住居および約1,579㎡の商業スペース。
・予算
総事業費は約1億2,820万ドル、EB-5募集額は最大4,000万ドル。
〈EB-5ビザのメリット〉
EB-5ビザは、申請者に年齢、学歴、職歴、英語力といった厳しい条件がない点が魅力です。また、ビジネスを運営する必要もなく、自由に住む場所を選べます。
他国の人気ビザ比較
アメリカのEB-5ビザは、永住権を得られるだけでなく、投資資金が一定期間後に返還される点でも価値があります。以下(表1)は他国との比較です。
【表1:各国のビザの比較】
| 国 | 投資額(米ドル換算) | 滞在資格 | 審査期間 |
| アメリカ | $80万 | 永住権 | 約1~5年 |
| ドバイ | $20万 or $80万 | 長期滞在(2or10年) | 2ヶ月 |
| ニュージーランド | 約$320万 | 永住権 | 1~1.5年 |
| ギリシャ | 約$30万 | 長期滞在(5年更新) | 約1年 |
| マレーシア | 約$25万 | 長期滞在(20年) | 3~5ヶ月 |
| タイ | $50万 | 長期滞在(10年) | 2~4ヶ月 |
ゴールドカード vs. EB-5投資永住権
投資家が直面する経済的・法的差異を、4人家族のモデルケース(1ドル=150円換算)で比較します。(表2)
ゴールドカードが提示する「数ヶ月」というスピードは、お子様の進学等の重要な目的がある方にとっては、数億円の資産を寄付してでも手に入れる価値があるかもしれません。
【表2:ゴールドカードとEB-5 の経済的・法的差異】
| 項目 | トランプ・ゴールドカード | EB-5 投資永住権 (TEA) |
| 資本の性質 | 寄付(完全な損失) | 投資(元本返還の可能性) |
| 4人家族の総コスト | 400万ドル(約6億円)+ 手数料 | 80万ドル(約1.2億円)+ 手数料 |
| 家族の扱い | 個別課金(1人100万ドル) | 1口の投資で家族全員をカバー |
| 情報開示リスク | 20年職歴・全暗号資産情報 | 投資資金の適法な源泉証明 |
プラチナカードとは?富裕層向け「節税提案?!」
500万ドルの寄付を条件とした「プラチナカード」構想では、年間270日の滞在許可と米国外所得の非課税措置が謳われていますが、法的に不安定な状態にあるため現時点では注意が必要です。
米国内でも問題となっているトランプ・ゴールドカードの法的脆弱性の現状
ゴールドカードの法的基盤は非常に脆弱で、2026年2月3日、全米大学教授協会(AAUP)等は、ゴールドカードが「金銭による権利販売」であり、議会の権限を侵害しているとして国土安全保障省(DHS)等を提訴しました。もし裁判所が予備的差止命令を下せば、制度は即座に停止される可能性があります。その際、商務省に支払った「返金不可」の寄付金が没収または数年にわたって凍結される可能性があることには注意が必要です。
現時点では EB-5が「賢明な選択」
新規のEB-5(I-526E)は2026年9月30日までに申請を完了させれば、万が一将来的にプログラムが失効しても、審査とビザ発行は法的に保証されています。この期限を過ぎれば、様々な影響を受ける可能性がありますので注意が必要です。
家族(夫婦と21才未満のお子様2名)がいる場合は?
4人家族で投資永住権を申請する場合、約6億円を寄付するゴールドカードよりも、約1.2億円の投資で家族全員の永住権を申請できるEB-5のほうが、現時点では「賢明な選択」と言えるでしょう。