譲渡オーナーの人生を充実させるための『夜よく眠れる運用』とは

NEXT REPORT

ジョン・アルカイヤ       Dimensional Japan Ltd. / CEO 兼統括責任者
1995年、日本でMSAITM(現在のモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント株式会社)を立ち上げ、1996年、年金福祉事業団(現在の年金積立金管理運用独立行政法人)初の運用委託投資顧問会社3社のうち1社となる。証券投資の経験は30年以上。外国人として初めて日本証券投資顧問業協会の副会長の職を1998年から2000年まで務める

資産運用を行っていても相場の変動で一喜一憂する必要はない。ここでは夜もぐっすり眠れるよう、「運用」のポイントを解説する。

昨年12月8日(木)、12日(月)、 21日(水)と3日間、ネクストナビは「譲渡オーナーの人生を充実させるための『夜よく眠れる運用』とは」というテーマでオンラインセミナーを開催した。

今回のセミナーは、進行役としてネクストナビ代表取締役社長の石黒哲明、パネリストとして青山フィナンシャルサービスウェルスマネジメント部部長の大垣和美氏、そしてメインパネリストとしてノーベル経済学賞受賞者が多数在籍する米国の資産運用会社、ディメンショナル・ファンド・アドバイザーズ( 以 下 、ディメン ショナル )の Dimensional Japan Ltd.代表のジョン・アルカイヤ氏を中心にトーク形式で実施した。本記事ではその模様をレポートする。

他の資産運用会社との違い

ディメンショナルは他の資産運用会社と何が異なるのか。運用会社には大きく分けると①市場について予測する会社と②市場について予測する必要がない会社の2つがあるとアルカイヤ氏は言う。

同社は膨大な資金(5,400億米ドル、2022年9月末時点)を預かっているが、約1,500名(2022年9月末時点)の従業員しかいない。他の運用会社と比較するとこの少ない人数で、これだけの金額を運用しているところは珍しいと言う。なぜその巨額の資金を僅か約1,500名の従業員で運用することができるのか。その理由をアルカイヤ氏は「我々のフィロソフィーはたった1つだけだから」と語る。

そのフィロソフィーというのは「現在の市場価格を信用しつつ、厳格な研究から得られた知見を活かし、期待リターンの高い銘柄に投資すること」だと言う。そのため同社は市場に勝つために予測するということは敢えてしていない。

同社はノーベル経済学賞を受賞した人が多数在籍しており、科学的に市場を分析している会社だ。だからこそ現在の市場価格は適正なものだと受け止めた上で、期待リターンの高い銘柄に比重を置いて投資をすることができる。

運用を検討する際のポイント

運用を検討する際には2つの大事なポイントがあるとアルカイヤ氏は言う。それは①低コストの商品と②リスク分散である。

運用手法には目安となる指数に連動することを目標とした「インデックス運用」や様々な予測やシミュレーションに基づき、ミスプライスの発掘や売買タイミングを計る「銘柄選択・アクティブ運用」がある。

前者は報酬料率が低めに設定され、一定程度の分散投資を実現するものが多いが、売買コストなど潜在的なコストがかかり、リターンは原則投資対象指数からコストを引いたものとなる。

後者はファンドの運用方針によってそのルールは千差万別だ。市場が持ってない情報を運用会社がリサーチして持っている場合もあるが、現代ではほとんどの人がスマホを持っており、あらゆる情報が瞬時に手に入る。したがって、よほどのインサイダー情報がなければ株価が伸びるかどうかなんて分からない。

ディメンショナルでは様々な情報を内包している市場価格を学術的に研究し高いリターンを期待できる証券を特定、分散効果を損なわない独自の運用手法を展開している。そして柔軟なトレーディングにより過度な取引を抑制し潜在的コストを低減している。

同社は設立してから41年経つが、株式は上場していない。そのため四半期開示に追われず、株主のために短期目線で利益を追求する必要がない。したがって無駄なコストを最小限にして、扱う商品を低コストにできる。顧客のために真に仕事ができる環境が整っている会社だとアルカイヤ氏は言う

左から石黒、アルカイヤ氏、大垣氏

なぜ、独立系のファイナンシャルアドバイザーが増えているか

日本ではまだ青山フィナンシャルサービスなど、独立系のファイナンシャルアドバイザー(IFA)はとても少ない。

これまで証券会社などは自らの収益をあげるために、コミッション体系のもと、強引に金融商品を顧客に販売してきた一面があった。しかし、アドバイザーの間で、そういう販売の仕方はもう止めたいという人が増えてきた。

一部のIFAは投資信託などの残高に応じたフィー体系を採用している。そうしたフィー体系は何度も顧客に売買させて手数料を取ろうとする恐れのあるコミッション体系よりも顧客との利害関係が一致したビジネスモデルだ。

IFAは顧客となぜ投資をするかという目的と目標(ゴール)を予め明確に決める。そして選ぶ商品もなるべく低コストで且つリスクがより分散されている商品を顧客の人生の時間軸を考慮して決める。そうして決定した資産配分を長く維持することでリターンは安定し、ゴールの実現可能性は高くなる。

欧米等グローバルにIFAが増えてきたのはこうした理由からだ。

アドバイザーをどのような形で選べば良いのか

アドバイザーが最初に行うべきことは顧客がどういう人物か、どういう家族構成か、投資目的は何か、子供や孫の進学予定先などを「知る」ことだ。次に、それを考慮してポートフォリオを「設計」していく。そこで納得した顧客にはきちんと説明して「伝える」。そして実行する。 そしてアドバイザーは「規律を守る」というのがとても重要であるとアルカイヤ氏は語る。

相場が荒い時や、大統領選挙など不確実性が高い時は冷静に物事を考え「あなたのゴールは変わっていませんね。じゃあ、舵は今のままで大丈夫です。」と、きちんとコーチできる人を選ぶのが重要だ。そして、アドバイザーにはゴールが変わったらきちんと話すことも大切だ。ゴールが変わらなければ株や債券の比率や商品は変更する必要ない。

アドバイザーの付加価値とは

アドバイザーの付加価値は、投資計画の立案やリバランスだけではなく、規律を守った投資行動のコーチングや相続対策なども含めた「資産全体のプランニング」にあると大垣氏は語る。それはさながら資産全体を診断するドクターのようだ。

近年 、AI によるロボアドバイザーが急成長しているが、資産全体を診断でき、また困ったときには直ぐに相談できるアドバイザーが近くにいれば、心は常に安心するはずだ。これはロボットにはできないことだ。

最後に大垣氏より「ディメンショナル社の運用技術と青山フィナンシャルサービスのようなIFAが組み合わさることで、相場に一喜一憂せず、「夜よく眠れる運用」が可能になる。投資を始めるにあたって、特別なことは何もする必要はなく、またこれまでの生活を変える必要もない」とセミナーを締めくくった。

【ネクストナビ相談窓口】
E-mail:https://next-navi.co.jp/contact
TEL:03-6439-5817

【参考:本記事に関わる企業】
青山フィナンシャルサービスHP:https://aoyama-fs.co.jp/