会社を売って海外へ行こう!~富裕層向け海外生活と海外不動産のトレンド【第1回】シン富裕層の海外生活

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 2023年10月13日(金)、GINZA SIX(東京都・銀座)にて株式会社ネクストナビは「会社を売って海外へ行こう!~富裕層向け海外生活と海外不動産のトレンド」というテーマで、セミナーを開催した。

 今回のセミナーは、全3部構成である。

 第1部は、昨年発売され、ベストセラーになった書籍『日本のシン富裕層』( 朝日新聞出版)の著者であり、2万人以上の海外移住や長期滞在に関する相談を受けてきた株式会社アエルワールド代表取締役社長の大森健史氏が「シン富裕層の海外生活」というテーマで講演した。

 第2部ではアメリカ不動産販売実績3年連続 No.1の株式会社オープンハウスより、「海外不動産を保有するメリット」と題して、同社のウェルス・マネジメント事業部東日本エリア統括の齋藤新氏が講演した。

 第3部では株式会社ネクストナビの代表取締役社長の雨森良治が司会進行役として第1部の講師である大森氏と第2部の講師である齋藤氏とともに、「会社譲渡後の新ビジョン」をテーマにパネルディスカッションを実施した。

 本記事では第1部についてレポートする。

【全3回の目次】
第1部:シン富裕層の海外生活

第2部:海外不動産のメリット
第3部:会社譲渡後の新ビジョン

世界のミリオネアの移住事情

 大森氏は2004年にアエルワールドを設立し、19年以上、延べ2万人以上に海外でこれから生活する人のサポートを行ってきた。

 日本ではあまり馴染みがないが、世界では移民会社(移民の募集や送り出し、世話を行う会社)が大体3,400社程度あると言われ、ミリオネア(資産100万ドル以上)、ビリオネア(資産10億ドル以上)といった資産家の方を対象に移住を支援している。

 例えば2015年、世界において大体6万4,000人位のミリオネアが海外に移住をしている。フランスから大体1万2,000人、中国からは9,000人ミリオネアが出国(減少)し、受け皿としてアメリカが1万人、カナダが8,000人ものミリオネアを受け入れている。

 受け皿となっているのは他にもオーストラリア(11,000人増加)やニュージーランド(4,000人増加)などだ。 

 2016年には海外へ移住するミリオネアが8万2,000人程度に増え、2017年には9万5,000人、2018年には10万人を超えた。現在、移民業界は非常に成長している産業と言える。

〈移住が増えている要因〉

 これについて、大森氏は「『ヒト・モノ・カネ』の中で「ヒト」と「カネ」が確実に動いている、その要因は、現在住んでいるその国の経済状況や見通し、若しくは治安の問題、戦争など」とのことだ。

 また、移民法が変わって、住みやすくなったり、ビザを取りやすくなったりする国が増えたことも要因の一つだ。中国は2017年から2018年にかけて1万5,000人程度のミリオネアが出国(減少)しているが、オーストラリアがその分1万2,000人、ニュージーランドが1,000人増えた。UAEのドバイも2,000人増え、アメリカは安定的に1万人ずつ増えている。中国とアメリカは国同士は非常に仲が悪いが、2016年から17年くらいまでは中国人の富裕層がアメリカに投資家ビザで約50万ドル投資して永住権を取得している。移民の受け入れにも上限があり、アメリカは当時1万人が上限だったが、そのうち8,000人位は中国人が投資家ビザで永住権を取得していた。

 カナダも中国人の移住先として人気だったが移民が多すぎて、投資家ビザが6年前くらいから中止になっているが、それでも毎年4,000人ものミリオネアが増えている。コロナの影響で直近は世界で海外移住が減少傾向にあったが、コロナが落ち着いてきたので、これからまた海外移住が増えてくるのではないかと大森氏は予測する。

新しい富裕層=シン富裕層の登場

 日本においても現在、富裕層の海外移住が増えていると大森氏は語る。それも今までにはない、比較的若い富裕層、いわゆる「シン富裕層」だ。
 2017年頃から若い成功者が増えてきたと大森氏は言う。永住権のビザ申請を行うために大森氏はどうやって稼いだのか、彼らに聞いてレポートを作成し、各国の移民局の担当官に提出しなければならない。その中で大森氏は5種類のパターンがあるということに気が付いた。

シン富裕層は5種類

シン富裕層は下記の5種類に分けられる。
①ビジネスオーナー型、②資本投下型、③ネット情報ビジネス型、④暗号資産ドリーム型、⑤相続型だ。
 本セミナーでは①の参加者が多かったため、①に絞って講演がなされた。

シン富裕層の事例

〈上場企業オーナーが永住権取得〉

 特に上場企業のオーナーともなれば、その会社にも必要不可欠な人材になっているケースが多く、移住するからといって簡単に「さようなら」とはいかない。しかし、永住権やビザを取得するためには必ず「居住義務」が必要になってくる。その場合、今すぐとはいかないが、いつかは海外に移住したいという人が多い。それではどこがよいのか。居住義務がない、そこそこの先進国となると、ズバリ「ニュージーランド」だ。

 例えば中々日本から離れることができない病院経営をしている院長、理事長や上場企業のオーナーはそういう国で永住権やビザをとりあえず取得しておいて、移住できる状態になったら行く、そういった人も多いそうだ。

〈年収3600万で源泉徴収票が10枚〉

 40代のある企業経営者は年収3,600万だったそうだ。大森氏は「シンガポールのビザの要件として大体年収10万ドル以上(日本円で大体1,000万円から2,200万円程度)の証明が必要なので、とりあえず源泉徴収票送ってください」とお願いをしたところ、なぜか10枚送ってきたそうだ。「10年分も要らない、1年でよい」と思ったら実は会社が10社あって、全ての会社から360万ずつ貰っていたとのことだ。

 社会保険料を下げたいなど、いろいろな理由があるかもしれない。大森氏はその方に詳しく話を伺うと「基本的には面白そうな事業が見つかり、良い人材が見つかったら、その人にお金を渡して会社経営をさせて、成功するのを応援してあげる」のだそうだ。

 何故そうするかと問うと「事業を行っていると、ほとんど税金を取られるため、若い子達に働いてもらって、自分は働く時間を減らして、その子達が成功したら株を買い取ってもらう、そしたら、税金が20%で済むし、節税もそんなに考えなくていい。自分は楽になるし、若い子がやってくれたらすごくパワーも貰える」とのことだ。そのため10社から源泉徴収票がある。

〈海外移住の目的は?〉

 海外移住される人の目的は大体が早期リタイア、子供の教育、財産承継だと大森氏は言う。

各国の投資家ビザ条件

左記のスライドは各国の投資家ビザ条件、資産や会社経営の経歴があったら、ビザが取れる国だ。

 難易度は大森氏が難しいと感じたものはトリプルB、簡単だと感じたものはトリプルAで表示されている。

 アメリカは「A-」で、そこそこ難しい。一番難しいのは資産条件と各種チェックが厳しいオーストラリアだそうだ。

 そしてマレーシアは一般財団法人ロングステイ財団の調査によれば 14年連続(2006~2019年)で日本人が住みたい国「世界No.1」に選ばれていたが、近年人気がなくなってきたのはビザの申請要件が変わったためだと大森氏は言う。

 年収1,500万円以上あって、年間にマレーシアに90日以上滞在しなければならないという要件が1年ぐらい前に付加された。これによりビザを取得する人が減った。それに伴いマレーシアの不動産価格が下がってきている。ビザの要件が難しくなったら富裕層が不動産を買うメリットがなくなっただめだ。

 その代わり不動産価格が上がってきているのがタイやフィリピンだ。フィリピンは1,000万円投資し、年1回入国すれば永住権が貰える。

各国のビザ条件(起業・法人設立)

 シンガポール、ドバイ、カナダ、アメリカもビザが取得しやすい。
 会社を現地で設立すればドバイが一番簡単にビザを取得できる。アメリカは2、3名以上雇用する必要がある。20万、30万ドル以上の会社を買って経営すればよいのだが、これが結構面倒なようで、「管理が簡単なビジネスない?」と大森氏はよく相談を受けるそうだ。

 管理が簡単なビジネスを行うためには大体マネージャーを雇う。マネージャーを置けば確かに管理は簡単だが、会社の規模が小さいとマネージャーのコストも大きくなり殆どのケースで赤字に陥ってしまう。したがって、投資金額を増やして規模が大きい会社を購入するしかない。

 単にビザが欲しいということだけであればドバイの方が簡単だ。シンガポールはビザ更新の時にきちんとビジネスしていないと更新できない可能性がある。カナダは1名以上雇用すればよいので、小さい飲食店を買って1名雇えばよい。

相続税における海外活用としての各国勝手比較(2023年9月末時点)

 上記の「全世界課税+」はその地域に住んだ時に、国外の所得まで課税をされるかということを指す。例えばシンガポールに住んでドバイで不動産を買って運用してもシンガポールだったら課税されない。

 当然アメリカは全世界から課税があるが、実は相続税が結構安い。例えば、アメリカの相続税は1,300万ドル近くまでは控除がある。そういう意味では相続税だけが現状課題という人はハワイに不動産買って住むというのも選択肢の一つ。

 タイはこれまで所得があっても、その年中に持ち込まなければ課税されなかったが、最近、持ち込んだお金を全て所得として税金にかけると課税庁から発表された。お金を国内に持ち込んだ瞬間課税されるならば、富裕層は今後居住しなくなるのではないか、不動産価格も下がってしまうのではないかと大森氏は懸念する。

 上記の「国別評価」は移住するのであればどこがよいかを表したものだ。

〈マレーシアのビザ申請要件〉

 マレーシアのビザは要件が厳しくなったことは前述したとおりだが、具体的な要件は下記のとおりだ。

〈ドバイビザの種類〉

 ドバイは下記のとおり、ゴールデンビザとグリーンビザがある。

 ゴールデンビザだと最長10年間で更新も可能だ。法人を設立しなくても不動産を買えばよい。ヘルパーや子供のビザも取得でき、年に1回だけドバイへ行けばビザを維持できる。したがって現在、ドバイの不動産は2019年と比べて2倍から2.5倍位値上がりしている。

新ゴールデンビザ申請カテゴリと条件

 不動産投資の場合はAED(ディルハム、UAEの公式通貨)75万AED以上なので、大体3,000万円(1AED40円)位の不動産を購入すると2年のビザを取得できる。200万AED(約8,000万円)位の不動産を購入すると10年のビザが取得できる。金額によって取得できるビザが異なる。また、購入する物件は未完成物件でも問題ない。

〈アメリカ・EB-5(投資永住権)プログラム〉

 アメリカの永住権はきちんとした国の中で一番取りやすい国だと大森氏は言う。

 基本的に80万ドル投資して2年間で10人以上雇用を生めば審査期間が4、5年かかるが家族全員ビザが取得できる(子供は21歳未満が条件)。英語力は問われない。80万ドルの元金の出どころはチェックされる。いわゆるマネーロンダリングに該当するかどうかだ。

〈フィリピン投資永住権ビザ(ASRV)〉

 大体10月、11月頃になると「今年中に海外に移住したい、どこが一番早く住めますか」という質問を大森氏はよくいただくと言う。

 早く永住権を取得できる国の一つがフィリピンの投資永住権ビザ(ASRV)だ。

 年齢によって異なるが、7、8万ドル程度を支払うとあまり観光客が行かなそうなマニラから5時間位かかる地方のリゾート施設を使う権利が貰える。最大60日間滞在可能で審査期間は7日間程度だが、たった5日間から7日間滞在すれば永住権が取得できる。居住義務はなく、1年に1回だけ更新のためにフィリピンに訪れればよい。

〈タイ長期滞在ビザ(LTR)〉

 タイは100万ドル以上資があり、50万ドル以上で不動産を購入するかタイ国債を買えば10年間のビザを取得できる。個人所得が8万ドル以上、10万ドル以上の銀行預金と条件が付いているが、不動産若しくは国債を購入すれば、早めにビザが取得できる。

タイランドプリビレッジビザ

 もっと簡単にビザを取得する方法がある。お金を90万バーツ(360万円)支払うだけで5年間も有効だ。早ければ1ヶ月半から2ヶ月でビザを取得できる。

M&Aにおける株式譲渡にかかわる税金

 譲渡益税は20.315%で、所得税が15,315%で、住民税は5%だ。住民税というのは1月1日時点で住民票があるところに請求される。したがって、早めに海外移住の準備をして、例えば2月、3月、4月、5月から海外へ移住すれば譲渡益税が4分の1節約できる。詳しくは税理士の先生に聞いてほしいとの大森氏はアドバイスした。

おわりに

 最後に大森氏は「ビザは頻繁に条件が変わったり、年齢制限があったりと、分かりにくい部分が多い。必ず専門家に相談するようにしてほしい」と講演を締めくくった。

(注)本記事の内容は2023年10月13日時点での情報です。